1. はじめに:費用の不安は「情報戦」で乗り越える

イギリス大学院への正規留学を考えるとき、最初に立ちはだかるのが「お金」の問題です。授業料は年間で200~400万円、生活費や渡航費も含めれば、総額で500万~700万円以上かかることも珍しくありません。

こうした中、留学の夢を叶えている多くの人が活用しているのが奨学金です。条件に合う奨学金を複数見つけ、計画的に応募していけば、自己負担を大きく減らすことも可能です。

実は、正規の大学院留学を目指す日本人であれば、平均して30件前後の奨学金に応募できる可能性があるとも言われています。ただし、これらの情報は一か所にまとまっているわけではなく、自分で探しに行く必要があります。だからこそ、「情報戦」がカギを握ります。

本記事では、イギリス大学院留学を目指す方に向けて、どこが奨学金を出しているのか・どんな条件があるのか・どのように探すべきかを整理してご紹介します。


2. 奨学金の支給元はどこ?──日本とイギリス、両方から探すのが正解

奨学金は、イギリス政府や大学だけでなく、日本国内のさまざまな団体や自治体からも提供されています。支給元によって、金額・条件・選考基準が大きく異なるため、日本とイギリスの両方で探すことが、留学費用を抑えるための現実的な戦略です。

2-1. 日本国内から応募できる主な支給元

① 地方自治体(都道府県・市区町村)
たとえば東京都や福井県など、出身者向けに返済不要の奨学金を出している自治体が多数存在します。居住歴や出身校の条件がある場合もあるので、自分の地元自治体の国際交流・教育支援関連ページを必ずチェックしましょう。

② 民間財団・公益法人
例として、平和中島財団、柳井正財団、吉田育英会などが挙げられます。成績だけでなく、将来の目標や社会貢献性などが評価されるケースもあり、意欲的な社会人にとってはチャンスとなります。

③ 企業系奨学金
企業が社会貢献の一環として支援する奨学金もあります。例としては、伊藤忠記念財団、キーエンス財団などが知られています。こちらは金額が高額になることもありますが、特定分野や将来的なキャリアに条件が付くこともあります。

2-2. イギリス現地で提供される奨学金

① 政府系奨学金:Chevening Scholarship
英国外務省が主導し、日本を含む対象国から優秀な人材を受け入れる全額支給型奨学金です。授業料に加え、生活費・渡航費もカバーされる手厚い制度で、社会的インパクトやリーダーシップが重視されます。

② 各大学が独自に提供する奨学金
多くのイギリス大学では、国際学生向けに奨学金制度を整備しています。以下は一例です:

  • Clarendon Scholarship(オックスフォード大学)
  • Gates Cambridge Scholarship(ケンブリッジ大学)
  • UCL Global Master’s Scholarship(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)
  • Merit Scholarshipシェフィールド大学

大学によっては、出願時に自動的に選考対象となる奨学金もあるため、出願先の大学の奨学金ページを丁寧に確認することが大切です。

③ 英国政府×大学×British Councilによる:GREAT Scholarships
対象大学と専攻が毎年異なりますが、日本からも応募できる制度です。£10,000規模の授業料補助が特徴です。


3. 応募資格でチェックされる主な条件

奨学金にはそれぞれ応募条件が設けられており、自分に合ったものを選ぶことが重要です。特に注目すべき条件は以下の通りです。

  • 年齢や学歴要件
     例:応募時点で35歳以下/学士号以上を取得済み など
  • 専攻分野の制限
     例:STEM(科学・技術・工学・数学)系、国際協力、芸術など分野が限定される奨学金もあります
  • 経済状況・家庭環境
     家族構成や世帯年収に応じて支給対象を決めているケースも多く、「経済的支援が必要である」ことを証明する書類が求められることもあります
  • 語学力と成績
     IELTS 6.5以上、大学のGPA3.5以上など、一定のアカデミックな基準が設けられている場合があります
  • 志望動機の一貫性
     Personal Statementなど、出願書類全体との整合性が重要視されることが多いため、「なぜその大学でその専攻を学びたいのか」を明確にしておくことが不可欠です

4. 奨学金の探し方と、迷った時のサポート活用法

奨学金は、「探し方を知っているかどうか」でチャンスの数が大きく変わる分野です。以下のような方法で、できるだけ多くの制度にアクセスすることがカギとなります。

  • 大学の公式サイトで調査
     出願先大学の「Funding」「Scholarships for international students」ページには、大学独自の奨学金情報が詳しく掲載されています。出願後に自動的に選考される奨学金もあるため、しっかり確認しましょう。
  • British Councilの「Study UK」やJASSOの情報ポータルを活用
     GREAT Scholarshipsなど、英国政府主導の奨学金や提携大学一覧は、British Council公式ページで最新情報が公開されています。日本の学生向けにはJASSOの奨学金検索も役立ちます。
  • 各種奨学金検索サービス・財団の公募サイトを活用
     多くの民間財団や自治体は、春~夏にかけて奨学金募集を開始します。毎年内容が更新されるため、前年の情報も含めて早めにチェックを始めるのがベストです。
  • 当社サービスでは、有料プランをご契約いただいた方に、奨学金探しを含むフルサポートをご提供しています。
     専攻・経歴・地域性・進学予定校などに応じて、応募可能性が高い奨学金をリストアップし、応募の優先順位や出願戦略までアドバイスします。情報の断片を集める時間や不安を省き、準備に集中できる体制を整えています。

5. 応募準備:必要書類とスケジュール管理のポイント

奨学金は、大学の出願とほぼ同時期に締切が来ることが多く、準備の段取りが非常に重要です。以下の書類とスケジュール管理が、応募成功のカギになります。

応募に必要な主な書類

  • 志望動機書(Personal Statement)
     学びたい内容や将来のビジョンを具体的に伝えることが求められます。奨学金用と大学出願用で、トーンや構成を調整する必要がある場合もあります。
  • 推薦状(Reference Letter)
     大学教員や上司など、自分の学業・仕事面での評価を語れる人に依頼します。英語での提出が求められることもあるため、早めに準備しましょう。
  • 家計に関する書類
     保護者の収入証明や課税証明書など、「経済的支援が必要であること」を証明する書類が必要になる場合もあります。

スケジュール管理の注意点

  • 締切の時期にばらつきがある:大学出願前に締め切られる奨学金もあるため、早めの情報収集が不可欠です。
  • 1つの奨学金にかけない:同時に複数応募することが前提。**「応募のポートフォリオ化」**が有効です。
  • 推薦状など、他人に依頼する書類は最優先で動く:相手の負担を減らすためにも、早めに相談・草案共有しておくのがベストです。

6. 留学成功者の声:奨学金を味方につけたリアルな事例

奨学金を活用してイギリス大学院留学を実現した人々は、どんな工夫をし、どんな壁を乗り越えてきたのでしょうか?ここでは、実際の3つの成功事例を紹介します。きれいな成功談ではなく、「どうやってそこに辿り着いたのか」に焦点をあてています。

ケース1:地元自治体+大学奨学金のW受給で、負担ほぼゼロに(30代・社会人・教育分野)

大学職員として8年勤務していたAさんは、「教育政策」を学ぶためにUCLの教育学修士課程への出願を決意。勤務先では留学の前例がなく、資金のあてもないままのスタートでした。

まず注目したのは、自身の出身地である関西の市役所の教育支援課が出している奨学金。給付額は年間100万円と限定的でしたが、条件は“市内在住歴3年以上”とシンプルで、倍率も比較的低いものでした。「申請書と志望動機だけで応募できる」形式だったことも、仕事と並行して準備を進めやすかったポイントです。

同時に、出願予定のUCLが用意していた国際学生向け奨学金も調査。“学業成績では他の応募者に勝てない”と感じていた彼女は、志望動機の中で「日本の地方教育改革にどう還元するか」を緻密に描き出し、社会的意義を前面に押し出しました。結果として、授業料全額免除+生活費一部補助の奨学金を獲得。

「留学に踏み切れたのは、“お金が理由で諦めなくていい”という確信を得られたからでした」と話します。最終的に、自己負担はビザ・航空券を含めても10万円程度に抑えられ、夢だったロンドンでの学びを実現させました。

ケース2:1年目不採用→2年目でChevening合格へ。失敗を活かした再挑戦(20代後半・外資企業勤務)

外資系企業で働いていたBさんは、国際開発分野でのキャリアチェンジを目指し、イギリス大学院とChevening奨学金に同時出願しました。1年目は書類審査で不採用。「仕事の経験年数も少なく、志望動機が抽象的すぎた」と後で振り返ります。

しかし彼女はそこで諦めず、翌年の再挑戦に向けて戦略を見直します。まずは志望理由の明確化。前回は「国際的な仕事がしたい」程度だった動機を、**「日本企業とグローバルなNPOをつなぐ中間人材として、アジア圏の教育政策に橋をかけたい」**という、キャリアと社会課題を結ぶ文脈にまで落とし込みました。

また、社内の上司に頼んでプロジェクトのリーダー役を経験し、翌年の応募時には「行動実績として語れるストーリー」を増やしました。面接では、前年の不合格理由を自ら分析した上で「過去とどう向き合ったか」を語ったことで、**“自己反省と成長のプロセスを見せたことが評価された”**と話します。

結果として、2年目でCheveningに合格し、フルファンディングでの渡英が決定。「悔しい思いをしてでも、もう一度挑戦してよかった。結果より、思考の深さが見られていると実感しました」と語ってくれました。

ケース3:「100時間のリサーチ」で見つけた、本当に自分に合った奨学金(30代・男性・理系出身)

Cさんはエンジニアとして10年以上働いた後、技術×経営を学び直すためイギリスのMBAコースへの進学を検討していました。ただ、MBAは奨学金が少ない上、競争率も非常に高い。そこで彼がとったのは、「闇雲に応募しない」戦略でした。

彼はまず、30件以上の奨学金をExcelにまとめ、条件・応募期間・過去の合格者プロフィールを徹底的に比較。大学ランキングや金額だけでなく、「どんな人を応援したいか」という提供者側のメッセージにも注目し、「自分を最も必要としてくれる組織」を探しました

結果的に、応募したのは厳選した5件。志望理由書では、それぞれの団体の背景や理念に触れ、「自分がどのようにその理念を体現できるか」を一つひとつの奨学金に合わせて調整しました。

その結果、3件に合格。総額600万円近い支援を獲得。イギリス大学院での学びをスタートさせました。「調べるのは大変だったが、奨学金は“探せばある”のではなく、“自分とつながる場所を見つけにいく”ものだった」と振り返ります。


7. まとめ:正しい情報と行動が、奨学金獲得への第一歩

奨学金の獲得は、偶然ではなく**「情報を武器にした準備の積み重ね」**によって実現します。

  • チャンスは意外と多く、自分の条件に合う制度が見つかる可能性は高い
  • ただし、その分だけ調査・比較・応募準備には労力がかかる
  • 早めに動き、スケジュールと書類の戦略を立てることが鍵

そして何より大事なのは、**「どの情報を信じ、誰と準備するか」**です。
個人でのリサーチに限界を感じたら、正確な情報と判断を共にできるエージェントやパートナーを持つことも、留学準備を加速させる大きな力になります。

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奨学金は、「自分の過去と未来をつなげる物語をどう語るか」が問われる領域です。
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